抄録
2つの独立した圧迫血管により,顔面痙曇と三叉神経痛が共存した症例を経験した.症例は33歳,女性.古顔面痙撃と古顔面痛を主訴に当科を受診した.神経学的には,発作間欠期には特に異常を認めなかった.右後頭下開頭の同じ術野にて,顔面痙撃に対してはinferior paramastoid approach,三叉神経痛に対してはinfratentorial lateral supracerebellar approachを行い,2つの独立した圧迫器官減圧術を行った.術後症状は消失し,合併症も認めなかった。これら2つの独立した病変に対しては,同一視野でも手術可能ではあるが,術中の聴神経への牽引を防ぐため,それぞれの病変への解剖学的アプローチの違いを理解し,2つの異なったアプローチで神経血管減圧術を行った方が,合併症を起こさずにより安全に手術できると思われた.