抄録
低髄液圧症候群は,脳脊髄液の漏出による起立時の牽引性頭痛を主症状とする症候群である.この疾患概念は70年以上も前からあり,また,1988年の国際頭痛分類(初版)にも記載されるなど,単に古いだけでなく,広く知られている病態である.しかし,近年,本症候群と外傷性頚部症候群との関係が取りざたされ,その診断・治療が社会問題化している.現在,低髄液圧症候群(脳脊髄液減少症)に関して,厚生労働科学研究費補助金「脳脊髄液減少症の診断・治療法の確立に関する研究(研究代表者:嘉山孝正国立がん研究センター理事長)」が進められており,今回は,この研究成果も踏まえ,頭部外傷に伴う低髄液圧症候群の考え方について概説したい.