脳神経外科ジャーナル
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びまん性脳損傷による高次脳機能障害の画像解析(<特集>頭部外傷update)
成相 直稲次 基希日浦 幹夫石井 賢二細田 千尋大野 喜久郎
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2011 年 20 巻 12 号 p. 880-886

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抄録
【目的】頭部外傷によるびまん性軸索損傷は,治療により家庭復帰が可能になった後も,高次脳機能障害が問題になり社会復帰の障害となることが多い,一方その形態的画像所見の乏しさにより,脳局所の神経機能異常を検出することが困難である.最近は脳振盪などのより軽度のびまん性脳外傷も高次脳機能障害の発生に関与しているのではないかということが注目されている.複数の診断プローブを組み合わせたPET分子イメージング法によるびまん性脳損傷患者の大脳皮質機能異常に関する臨床研究に関し概説する.【方法】神経外傷後慢性期の患者で局所損傷所見の乏しい者を被験者として計測した.^<18>F-FDG,^<11>Cフルマゼニルによる計測を行い,脳代謝,神経細胞脱落,軸索末端に関する情報を収集した.正常被験者との統計学的解析をSPM2にて行い,患者群あるいは個々の患者の異常部位を検出した.【結果】びまん性軸索損傷患者では,帯状回にブドウ糖代謝とベンゾジアゼピン受容体結合能低下を伴った一次障害部位が存在すると考えられた.大脳皮質の代謝低下部位,受容体結合能低下は個々の患者ごとのバリエーションが大きく,優位半球の代謝低下の程度と,高次脳機能障害の重症度に関連があると考えられた.脳振盪後に発生した高次脳機能障害患者で大脳皮質の機能異常をPETで捉えることができ,さらにそれに対応する部位でMRIの拡散強調画像によるFA値の異常を検出することができた.【考察】PET分子イメージングはこれまで未知であったびまん性脳損傷と高次脳機能障害の関連を明らかにするのに有用な手法と考えられる.MRIの拡散強調画像との相補的な解析も有用であった.今後とも症例の蓄積が必要と考えている.
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© 2011 日本脳神経外科コングレス

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