2011 年 20 巻 2 号 p. 80-86
急速に普及しつつある脳深部刺激療法は, 脳神経外科領域に新たな局面をもたらしたといえよう.脳深部刺激療法は, 異常をきたした神経ネットワークに可逆性をもって働きかけ, 修飾・制御し病態を改善させると考えられている.不随意運動症と難治性疼痛が主たる対象疾患である.特に不随意運動症では, パーキンソン病, ジストニア, 本態性振戦に対する効果は確立しているといえる.パーキンソン病では, 運動症状の日内変動が著しい症例や激しいL-ドーパ誘発性ジスキネジアがみられる症例に高い効果が期待できる.ジストニアでは一次性の全身性ジストニアが最もよい適応である.また, 本態性振戦にも古くから用いられ即効性のあることが知られている.最近ではこうした疾患以外にも精神疾患やてんかんなどの治療法としての臨床研究も進められており, その適応範囲は今後ますます拡大していくものと考えられる.