脳神経外科ジャーナル
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パーキンソン病に対する遺伝子治療(<特集>最新のニューロモデュレーション)
藤本 健一
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2011 年 20 巻 2 号 p. 87-92

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抄録
神経細胞は再生しないため, パーキンソン病(PD)では細胞移植によるドパミン細胞の修復が試みられたが, いまだ成功していない.ウイルスベクターで神経細胞に直接遺伝子導入する方法は, 長期に広範囲に遺伝子発現が可能なことから, 将来性が期待されている.PDではAAV2とレンチウイルスベクターによる遺伝子導入臨床研究が行われている.まずGABA合成酵素のGAD遺伝子を, DBSの標的でもある視床下核に導入して活動を抑制することが試みられた.第I相試験で安全性が確認され, 第II相試験が開始された.次に神経栄養因子(GDNF)に類似したneurturin遺伝子を被殻に導入し, ドパミン細胞の変性予防が試みられた.第I相試験では著効したが, 第II相試験ではプラセボとの間に優位差が認められなかった.残り2つはドパミン合成酵素(TH, AADC, GCH)の酵素遺伝子を被殻に導入してドパミンを合成させる方法である.3つの遺伝子を導入すれば自動的にドパミンが合成される.一方, AADC遺伝子だけの導入ではL-dopaを経口投与する必要がある.ドパミン過剰による副作用の予防には, L-dopaの服薬量でドパミン産生を調整できる後者のほうが安全である.このためAAV2-AADCの被殻への導入が行われ, PD症状の改善とPET検査でのドパミン産生が確認された.3つの遺伝子導入には, ベクターにこれらを同時搭載するのが望ましい.AAV2の搭載量は限定されているため, 搭載量の大きいレンチウイルスベクターが開発された.馬感染性貧血ウイルスより合成されたレンチウイルスベクターに3つの酵素遺伝子を搭載して被殻に導入する臨床研究が開始されている.
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© 2011 日本脳神経外科コングレス

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