脳神経外科ジャーナル
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テモゾロミド導入後のグリオーマ薬物療法(<特集>グリオーマ治療の現状と展望)
廣瀬 雄一
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2012 年 21 巻 3 号 p. 200-206

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抄録

DNAメチル化剤テモソロミド(TMZ)の導入は,悪性グリオーマの薬物治療のうえで大きな発展をもたらし,従来その効果が明確な形で証明されていなかった化学療法が,生存期間の延長という治療成績の向上を示したということは非常に有意義である.しかし,そのー方で,悪性グリオーマは今なお根治のほぼ不可能な疾患であり,最近の脳神経外科関連の他分野にみられる進歩と比べると,いまだに多くの課題が残っている.これらを解決するために悪性グリオーマの生物学についての研究が精力的に行われ,遺伝学的解析による予後予測や治療感受性予測の流れができている.中でも0^6-methylguanine-DNA methyltransferase (MGMT)のプロモーター領域メチル化とTMZによる膠芽腫の治療成績の関係は近年注目され,そこからMGMTの不活化によるTMZの治療効果増強の試みがなされた.これはMGMT阻害剤の併用や,TMZの投与量・スケジュールの変更によって行われたが,必ずしも好結果を示さす,TMZ耐性がMGMTのみで説明されるわけではないこととともに,DNA攻撃型の化学療法剤による悪性グリオーマ治療の限界も示唆される.そこで,グリオーマの生物学的特性を利用した分子標的治療が期待され,欧米ではすでに数種類の薬物が臨床試験の対象となった.本稿では悪性グリオーマの臨床研究から得られた知見を紹介しながら,腫瘍生物学との関連について説明し,今後の治療発展のための問題点を提起する.

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© 2012 日本脳神経外科コングレス
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