抄録
妊娠産褥期脳出血への対応と外科的治療について自験例を元に文献的考察を加えて報告する. 妊娠産褥期脳卒中の頻度はまれであり約4割が脳血管異常に起因するとされるがいまだ明らかではない.
今回われわれは5症例の妊娠産褥期脳出血を経験した. 3症例は妊娠を引き金にして生じた妊娠高血圧症候群 (pregnancy induced hypertension : PIH) により脳出血を生じ, 1例はもやもや病が既往に認められた. 3例に手術を行い, 退院時の母体の予後はGOSでGRが4症例, MDが1症例であった. 胎児は1症例死亡した.
妊娠を契機に生じたPIHが引き金となり, 全身血管の血管攣縮と播腫性血管内凝固症候群 (DIC) によって脳出血が生じると推測される. 妊娠産褥期脳出血に対する外科治療は, 胎児への影響を考慮して母体に対する治療を遅らせるべきでなく各科で密に協力し治療にあたる体制が望まれる.