抄録
頭蓋内最深部に位置する前頭蓋底腫瘍摘出術の際には光学機器による腫瘍, 周囲構造物の可視化の如何が手術の成否を左右する. 経鼻的前頭蓋底手術 (TSS) は顕微鏡, 内視鏡の導入により飛躍的に進歩したが, 昨今内視鏡のハイビジョン化によってさらなる発展を遂げている. 従来型の6.75倍の画素数 (1,920×1,080=2,073,600 pixel) を誇るHD内視鏡では, その高い解像度を利して腫瘍および周囲構造物をより鮮明に識別できるようになった. その結果下垂体腺腫の術後下垂体機能温存率は向上し, 拡大経鼻手術における微小血管, 神経などの周囲構造物温存の確実性も増した. TSSはHD内視鏡導入によって拡大, 鮮明化した可視化領域に対応した摘出器具の開発により今後さらなる発展が期待できる.