2015 年 24 巻 7 号 p. 468-476
乳幼児揺さぶられ症候群と家庭内転倒・低位転落事故における頭部外傷発生メカニズムとその相違を解明することが虐待鑑別において重要である. そこで, 力学的手法により, これらの状況における頭部外傷発生メカニズムについて検討した. 生後4カ月の乳児のCT画像に基づき, 頭蓋内脳挙動を可視化できる頭部実体モデルを有する乳児ダミーを構築した. 本ダミーを用いて暴力的揺さぶりと家庭内転倒・低位転落事故を模した実験を実施した. その結果, 暴力的揺さぶりにおいて転倒・転落事故よりも大きな頭蓋内の脳の相対回転運動が観測された. これは伸展から屈曲方向に回転運動が転換する際に生じる頭蓋骨と大脳の顕著な逆回転挙動によると考えられた.