脳神経外科ジャーナル
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特集 良性脳腫瘍の診断と治療の可視化
頭蓋咽頭腫に対するガンマナイフ定位放射線手術の長期治療成績
四方 聖二小西 良幸林 基弘
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2015 年 24 巻 8 号 p. 535-543

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抄録
 頭蓋咽頭腫は組織学的良性腫瘍であり全摘出により完全治癒が期待できる一方, 重要な神経血管組織との癒着, 浸潤がある場合には全摘出は通常困難であり, 深刻な術後合併症はその後の患者QOLを大きく損なうことにもつながる. 術後残存腫瘍や再発腫瘍に対するガンマナイフ定位放射線手術は比較的新しい治療技術であり, 罹患年齢が若年であり生命予後が比較的よいため長期的な治療成績を明らかにすることが必須である. 本稿の目的は自験例をもとにその長期的な治療成績を明らかにすることである.
 対象症例は51例 (男性30例, 女性21例) で年齢中央値は44歳であった. 全例で組織診断がなされ, 6例で過去に放射線照射が行われていた. 腫瘍体積中央値は1cm3, 25病変が充実性, 16病変が囊胞性, 14病変が混合性であった. 腫瘍辺縁に対して照射線量中央値12Gyの照射が行われた. 前視路最大線量中央値は9.6Gyであった. 追跡脱落症例はなく, 追跡期間中央値は71カ月であった. 5年全生存率は92%であった. 局所再発は16病変で確認され, 3年および5年後局所制御率はそれぞれ88%, 67%であった. 遠隔再発は6例で経験され, 5年遠隔再発率は11%であった. 6例で腫瘍増大に伴い視機能の悪化がみられたが, 放射線誘発性視神経障害は経験されなかった. 中枢性尿崩症が2例で合併した. 頭蓋咽頭腫に対するガンマナイフ定位放射線手術は長期的に満足のいく局所制御率と低い治療関連リスクを両立する補助治療手段であり, われわれの治療成績は諸家の報告に比肩するものであった. しかしながら, 腫瘍制御率を向上させる余地はまだ残されており, 線量の上積みや寡分割照射の導入など技術的改善に継続して取り組む必要がある.
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© 2015 日本脳神経外科コングレス

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