脳神経外科ジャーナル
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特集 みらいを救う神経科学―最先端研究の実臨床へのフィードバック
シングル細胞レベルのCell AtlasとAIを用いた脳腫瘍治療への展望
夏目 敦至
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2018 年 27 巻 12 号 p. 889-895

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抄録

 ヒトの細胞は約40兆個あり, 細胞のDNAをつなげると740億kmある. 地球からシリウスまでの距離に相当する. この長さのDNAをわずか数時間で解析できる時代になった. 2000年代半ばから 「次世代シークエンス (Next Generation Sequencing : NGS)」 が普及し, 1,000ドルゲノムの時代を迎え, プラットフォームが完成した. 今はイントロンまでを読み込む全ゲノム解析 (WGS) が主流となり, パネル解析は間もなく終焉を迎える. 2020年にはパネルでもエクソンでもなく, WGSで解析するのが通常という時代が到来する. 加えて人工知能 (AI) の登場である.

 WGSでは数千~数百万の遺伝子異常がみつかる. 代表的なAIはWatson for Genomicsである. 電子化知識は氾濫し, グリオーマ関連の論文をキャッチアップするだけでも膨大な時間がかかる. Watsonは2,000万報を超える論文情報をはじめ, 癌の変異や生命のメカニズムに関する膨大な知識を日々学び理解し推論する. 遺伝子変異情報を元に適切な薬剤の情報を与える. さらにHuman Cell Atlasの開始である. 癌, ニューロサイエンス, 発生などの分野でひとつひとつの細胞の挙動を明らかにしていくというプロジェクトである. ゲノム・細胞・そして個体というドグマの中で, 医療はわずか2~3年で激変しているだろう.

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© 2018 日本脳神経外科コングレス

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