2019 年 28 巻 6 号 p. 342-351
本態性振戦は, 不随意運動として臨床上遭遇する機会が多いものの, 他の不随意運動症の頻度は比較的低く, 一般の脳神経外科医にとっては不慣れな領域と考えられる. 不随意運動症は, 脳血管障害, 脳腫瘍, 外傷などに伴い生じることもあり, 包括的に神経系疾患を診療する脳神経外科医として必須の知識でもある. 振戦に対しては視床腹側中間核 (Vim) に対する脳深部刺激療法 (deep brain stimulation : DBS) が一般的であるが, alternative targetとしてposterior subthalamic areaが注目されている. 症候性不随意運動症であるHolmes振戦や遅発性ジストニアは, 報告数が限られているものの, 難治例に対してDBSは有効な治療である. 凝固巣を作成しない可逆性, 調節性を有した治療法としてのメリットは, 現在もなお難治性不随意運動に対する治療として大きな役割を担っている.