2022 年 31 巻 2 号 p. 119-124
外傷性頚部頚動脈解離はまれであり, その発生機序としては鈍的頚動脈損傷の報告が一般的であるが, 鋭的頚部損傷の関与はきわめてまれである.
今回われわれは, 包丁による自殺企図の頚部自刺傷例で, 頚部頚動脈に解離に伴う高度狭窄を認め, 緊急頚動脈内膜剝離術を施行し良好な経過を得た. 頚動脈解離の機序としては, 包丁先端付近の背の部分が頚部刺入時に総頚動脈に鈍的な衝撃を加えるかたちとなり, 直接的血管損傷から解離をきたしたものと推察した.
頚動脈内膜剝離術では直接創部を観察でき解離壁の処置に加えて, 周辺合併損傷への対応や遠位血管内血栓の回収も可能であり, 開放創での外傷性頚動脈解離治療においてきわめて有用であると思われる.