2022 年 31 巻 2 号 p. 125-129
滲出性中耳炎および髄液鼻漏で発症し, 右中頭蓋窩錐体骨部髄膜脳瘤と診断した1例を報告する. 本症例の原因は, 肥満を伴う中年女性で骨欠損部近傍の手術歴や慢性中耳炎, 外傷歴を認めなかったため, 特発性と考えた. 経頭蓋アプローチで側頭筋膜を用いた右錐体骨部髄液漏修復術を施行した. 術後髄液鼻漏は消失したが滲出性中耳炎はいったん軽快し, その後再燃した. 画像診断では筋膜を中耳内に押し出すような仮性髄膜瘤を認めた. 本症例では, 潜在する中頭蓋窩の骨菲薄化あるいは髄膜脳瘤に, 肥満に起因する頭蓋内圧亢進が加わり髄液漏を発症したと推測される. 髄液漏修復には持続的な圧に耐えられるように硬性再建を併用した修復術が必要と考えられた.