2023 年 32 巻 2 号 p. 118-126
われわれは, dermoid/epidermoid cystと一致する臨床・画像所見を呈した後頭蓋窩mature teratomaのまれな症例を経験したので報告する. 17歳男性, 頭部外傷後に遷延する頭痛を契機に小脳腫瘍を偶発的に発見された. MRIでは拡散制限を伴う囊胞性病変の所見であった. 術中に毛髪を認めたためdermoid cystと診断したが, 病理組織学的に中胚葉成分を認めたため, 最終的にmature teratomaと診断した. Mature teratomaとdermoid/epidermoid cystとの鑑別が困難なことが多い. また, mature teratomaが大半を占めていても悪性成分を一部含むこともあり, その場合生命予後や術後の補助療法の必要性に影響するため, 病理組織学的診断が重要となる. さらに, mature teratomaは悪性転化して再発する可能性もあるため経時的な経過観察が必要である.