脳神経外科ジャーナル
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脳神経外科手術症例における動脈血中乳酸濃度
斎藤 竜太佐藤 清貴加藤 正人吉本 高志
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2000 年 9 巻 1 号 p. 48-51

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抄録

乳酸産生量の観点から脳神経外科手術症例の全身循環状態に関し検討した.対象は154例の脳神経外科手術症例で, 破裂脳動脈瘤54例, 未破裂脳動脈瘤17例, 脳内出血18例, 脳梗塞9例, 脳腫瘍23例, 脊髄・脊椎病変26例, 脳動脈奇形4例, 顔面痙攣3例である.全身麻酔導入後, 最初の動脈血採血から血中乳酸値を測定した.また脳動脈瘤症例の一部では内頸静脈血での測定を同時に行った.動脈血と内頸静脈血の乳酸値には有意差がみられなかった.破裂脳動脈瘤は未破裂脳動脈瘤, 脳腫瘍, 脊髄疾患に比べ有意に高値であった.緊急手術と予定手術症例を比較すると, 緊急手術症例で有意に高値であった.また破裂脳動脈瘤症例では, 発症時意識障害を伴った症例でより高く, 発症からの時間が短いほど高い傾向であった.これらの結果より, 脳神経外科緊急手術症例, 特に破裂脳動脈瘤では術前のgradeにかかわらず全身酸素需給バランスに不均衡があり, これを正しく評価し, 適切に治療すべきと考えられた.

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© 2000 日本脳神経外科コングレス
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