2017 年 14 巻 2 号 p. 69-82
自伝的推論は過去経験と自己を結びつける内省的志向である.本研究では自伝的推論尺度が構成された.467名の協力者(19~57歳)が,成功経験と失敗経験を一つずつ想起し,それぞれについて自伝的推論尺度,記憶の鮮明度と感情価を評定した.また自伝的記憶の機能の尺度(日本語版TALE尺度:落合・小口,2013)に回答した.さらに250名の参加者はアイデンティティ,自尊感情尺度,人生満足度に関する尺度に回答した.因子分析の結果,自伝的推論尺度は5因子(自己,転機,重要,教訓,リハーサル)から構成されており,信頼性と妥当性が示された.成功経験は失敗経験に比べると,強い自伝的推論を引き起こしていた.成功経験に対する自伝的推論と,アイデンティティ発達,自尊感情,人生満足度との関連が見いだされた.