リハビリテーションでは運動イメージを用いた介入の有効性が報告されている.しかし,高齢者において運動イメージ能力を測定する方法は確立されていない.そこで本研究では,特に若齢者を対象とした研究でよく用いられる運動イメージの主観的な質問紙評価であるJMIQ-Rと,より客観的な評価法の一つであるFittsの法則を用いたポインティング課題を用いて,評価法としての有効性と評価法どうしの関係性を明らかにするための実験を行った.若齢者12名(平均年齢24.17歳)と高齢者12名(平均年齢73.67歳)が実験に参加した.JMIQ-R,ポインティング課題のほか認知機能検査,運動機能検査を実施した.その結果,JMIQ-Rには若齢者と高齢者に有意差は認められなかった.対照的に,ポインティング課題では,若齢者は運動イメージと実際運動が一致している一方で,高齢者は難易度の高い条件で運動イメージ能力の低下が認められた.また,JMIQ-Rとポインティング成績(運動イメージ時間と実際運動時間の差分)の間には相関が認められなかった.このことは,JMIQ-Rとポインティングは運動イメージの異なる側面をとらえている,もしくは,運動イメージに対して異なる感度を持っていることを示唆する.以上の結果より,高齢者の運動イメージ能力の低下はJMIQ-Rのみではとらえきれない可能性が示唆された.