文章を黙読する際,頭の中で文章を音読する内声化が生じることが多い.これまでに,内声化と音声化を操作した文章読解実験の結果から,内声化が音声化と類似した機能を持つ可能性が指摘された(森田・髙橋,2019).その場合,論理的には,内声化を多く行うタイプの読み手は,音声化時に近い読み方をするはずであるが,その解釈を支持する結果はこれまで得られたことがない.本研究は,森田・髙橋(2019)の実験2を改変して追試を行った.大学生・大学院生40名に,12の短い文章を黙読してもらい,その読み時間,視点の停留数,順行移動距離,逆行数を記録した.また,各参加者が内声化を行う程度を2種類の方法で測定した.内声化を多く行う読み手はあまり行わない読み手に比べ,読み時間がより長く,文中のより多くの語に視線を停留させるという,音声化時により近い読み方をしており,論理的に整合する結果は得られた.ただし,内声化の個人差の測定法によって結果が不安定であることから,測定方法についてはさらに検討を重ねる必要性も指摘された.