認知心理学研究
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最新号
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原著
  • 根橋 妙恵, 松本 昇
    2024 年 22 巻 1 号 p. 1-18
    発行日: 2024/08/31
    公開日: 2024/09/08
    ジャーナル フリー
    電子付録

    状況を否定的に解釈するだけでなく,その解釈の柔軟性が欠如していることは,精神的健康へのリスクとなる可能性がある.研究1(N=196)では感情的BADE課題日本語短縮版の妥当性検討を行い,解釈バイアス・解釈の非柔軟性と抑うつ症状との関連を検討した.分析の結果,関連する尺度との収束的妥当性が得られ,解釈バイアスと解釈の非柔軟性は抑うつ症状と関連した.研究2(N=191)は,解釈バイアスとその柔軟性が反すうにおいてどのような役割を果たしているのかを明らかにすることを目的とした.相関分析の結果,解釈バイアスは考え込み型の反すうと関連し,解釈の非柔軟性は問題解決型の反すうと関連した.解釈バイアスと解釈の非柔軟性はそれぞれ異なるメカニズムで反すうと関連しており,それらに焦点を当てることは,治療の予測や介入に有用である可能性がある.

  • 武重 百香, 郷原 皓彦, 入戸野 宏
    2024 年 22 巻 1 号 p. 19-27
    発行日: 2024/08/31
    公開日: 2024/09/08
    ジャーナル フリー

    道具に対する2肢選択課題において,持ち手の向きが反応時間に影響を与えるという知見がある.その要因として,道具に特有のアフォーダンスと形状に関連した知覚的顕著性の2つの効果が指摘されてきた.両者を分離するために,本研究では異なる行為を意図して同じ道具を操作するときの時間を比較した.右手利きの大学生・大学院生(N=38)に,実物のやかんに対して左右どちらかの手を伸ばして「使用する(水を注ぐ)」または「移動する」動作を行うように求め,ボタンを離すまでの反応時間とボタンを離してからやかんを持ち上げるまでの運動時間を測定した.その結果,反応時間には差が認められなかったが,運動時間は使う動作を意図したときのみ,持ち手側の手で行う方が反対側の手で行うよりも短かった.この知見は,知覚的顕著性とは独立して,特定の行為に応じてアフォーダンスの知覚が特定の手の運動を促進することを示している.

  • 太田 直斗, 北神 慎司
    2024 年 22 巻 1 号 p. 29-39
    発行日: 2024/08/31
    公開日: 2024/09/08
    ジャーナル フリー

    本研究では,偶発学習パラダイムを用いて,オブジェクトの記憶成績と記銘時のカテゴリの関係を調べるとともに,その記憶成績がターゲットオブジェクトが提示される文脈に応じてどのように変化するのかを検討した.その結果,機能カテゴリと基本カテゴリと比較して,上位カテゴリによる記憶は課題の文脈の影響を受けることが示唆され,さらに,ディストラクタ刺激がターゲット刺激とカテゴリが類似しない条件においては,機能カテゴリと基本カテゴリによる記憶成績は上位カテゴリに応じて記銘するよりも高くなることが明らかとなった.これらの結果は,機能カテゴリは抽象的なカテゴリでありながらも,人工オブジェクト表象のコアとなる概念であるために,文脈の影響を受けづらかった結果として解釈された.本研究は,機能という概念の特性を明らかにするとともに,オブジェクトの概念処理の研究における,文脈情報の影響の重要性を示唆するものである.

  • 梁 葉飛, 有馬 多久充, 森田 愛子
    2024 年 22 巻 1 号 p. 41-49
    発行日: 2024/08/31
    公開日: 2024/09/08
    ジャーナル フリー

    文章を黙読する際,頭の中で文章を音読する内声化が生じることが多い.これまでに,内声化と音声化を操作した文章読解実験の結果から,内声化が音声化と類似した機能を持つ可能性が指摘された(森田・髙橋,2019).その場合,論理的には,内声化を多く行うタイプの読み手は,音声化時に近い読み方をするはずであるが,その解釈を支持する結果はこれまで得られたことがない.本研究は,森田・髙橋(2019)の実験2を改変して追試を行った.大学生・大学院生40名に,12の短い文章を黙読してもらい,その読み時間,視点の停留数,順行移動距離,逆行数を記録した.また,各参加者が内声化を行う程度を2種類の方法で測定した.内声化を多く行う読み手はあまり行わない読み手に比べ,読み時間がより長く,文中のより多くの語に視線を停留させるという,音声化時により近い読み方をしており,論理的に整合する結果は得られた.ただし,内声化の個人差の測定法によって結果が不安定であることから,測定方法についてはさらに検討を重ねる必要性も指摘された.

資料
  • 久原 璃子, 高野 裕太, 宮崎 由樹
    2024 年 22 巻 1 号 p. 51-59
    発行日: 2024/08/31
    公開日: 2024/09/08
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,容姿という領域固有の完全主義(容姿に対する完全主義)の適応的側面と不適応的側面を同時に測ることができるPhysical Appearance Perfectionism Scale(PAPS)の日本語版を作成することであった.研究1では,原版を日本語へ翻訳し,因子構造を検討した.確認的因子分析(n=545)の結果,原版と同じ2因子構造(「完全さへの願望(Hope For Perfection)」,「不完全さへの懸念(Worry About Imperfection)」)が再現された.研究2では,関連する既存の尺度を用いて収束的妥当性を確認した.偏相関分析(n=655)の結果,おおむね原版の結果が再現された.研究3では再検査信頼性を確認した.相関分析(n=158)の結果,原版と同様の高い信頼性が確認された.以上の結果から,日本語版PAPSは,高い妥当性と信頼性を備えた尺度であることが示された.

  • Takashi Kabata, Tomoya Kawashima
    2024 年 22 巻 1 号 p. 61-73
    発行日: 2024/08/31
    公開日: 2024/09/08
    ジャーナル フリー

    隠匿情報検査は被検査者に対して一連の質問群を提示し,それらに対する反応を比較することで,犯行に関連する隠匿情報を検出する技術である.反応時間に基づく隠匿情報検査研究は盛んに研究されているにもかかわらず,実務では自律神経系反応に基づく隠匿情報検査のみが採用されている.これは従来の反応時間による隠匿情報検査が既知の事件事実の質問に制限されてしまうという方法論的制約によるものである.この問題を解決するために,我々は,空間手がかり課題において手がかりが与えられた位置に後続する標的の検出が遅延する「復帰抑制」を利用した新しい反応時間に基づく隠匿情報検査課題を作成した.参加者は事前に指定された特定の数字を記憶・隠匿した状態で課題を行った.実験1では,探索的分析において,手がかりが隠匿情報の時に復帰抑制が一部消失することが示された.しかし,実験2では同様の傾向は再現されなかった.効果の頑健性が低い原因や今後の発展可能性について議論した.

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