2025 年 22 巻 2 号 p. 125-144
本研究は,ネガティブな自己不連続性が日常生活でなつかしさを感じる傾向と相関し,状態なつかしさの喚起度を高めることを示したSedikides et al. (2015)の概念的追試を行うことを目的とした.研究1では,生活の変化がポジティブ,ネガティブであるか回答し,その変化に由来する自己不連続性を評定するよう手続きを修正した.その結果,ネガティブな変化の多さとなつかしさ傾向の相関は非有意であり(.07),自己不連続性となつかしさ傾向は有意な相関を示した(.20).年齢を統制すると後者の相関はわずかに低下し非有意になった(.18).探索的分析により,なつかしさ傾向はポジティブな変化ではなくネガティブな変化に由来する自己不連続性とのみ正に相関することが示された.研究2Aでは先行研究と同じ材料を用いて,研究2Bでは新たな材料を用いて自己不連続性の実験操作を行ったところ,自己不連続性は状態なつかしさの喚起度に影響を与えなかった.これらの結果から,ネガティブな自己不連続性はなつかしさ傾向と関連するが,状態なつかしさの喚起度を高めないことが示された.