認知心理学研究
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原著
自伝想起課題と他者エピソード想起課題が気分一致記憶の生起に及ぼす影響
野内 類兵藤 宗吉
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2006 年 4 巻 1 号 p. 15-23

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抄録
気分一致記憶とは,気分が気分状態と一致した情報の記憶を促進することである.この気分一致記憶の生起には自己に関係づける処理が重要であると考えられている.本研究では,自伝想起課題と母親に関係づける課題である他者エピソード想起課題を用いて気分一致記憶の生起要因を検討した.大学生66名をランダムに実験条件に割り振った(ポジティブ,ネガティブ,ニュートラル).ポジティブとネガティブ気分群は,気分誘導のために音楽を聴取した.各群の被験者には4秒間隔で刺激が呈示された.刺激は快語30語と不快語30語の形容詞を使用した.参加者は刺激語から自伝的記憶が想起できるかどうか,もしくは刺激語から母親のエピソードを想起することができるかどうかを判断した.実験の結果,自伝想起課題でも他者エピソード想起課題でも,再生率においてポジティブ気分でもネガティブ気分でも気分一致記憶が見られた.このことから自己に関係付ける処理のみが気分一致記憶の生起に重要ではないことがわかった.
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© 2006 日本認知心理学会
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