認知心理学研究
Online ISSN : 2185-0321
Print ISSN : 1348-7264
ISSN-L : 1348-7264
4 巻, 1 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
原著
  • 松田 憲, 楠見 孝, 山田 十永, 西 武雄
    2006 年 4 巻 1 号 p. 1-13
    発行日: 2006/08/31
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    本研究では,メロディ親近性とサウンドロゴの反復呈示が商品評価に及ぼす効果,サウンドロゴ接触から購買に至る因果関係,メロディに乗せることによるコピー文の記憶促進,の3点を検討した.実験1では大学生47名にメロディのみを聴覚呈示した結果,メロディ反復呈示による好意度の上昇は見られなかった.実験2では,大学生,大学院生55名にサウンドロゴを聴覚呈示し,コピー文再生課題,コピー文に含まれていた商品名に対する典型性,安心感,好意度,商品購買意図評定を行った.実験の結果,第1に,メロディ親近性とサウンドロゴ反復呈示によって安心感,好意度,購買意図評定値が上昇した.第2に,サウンドロゴ反復呈示とメロディ親近性によって喚起された商品名への安心感が,商品名への好意度,商品購買意図に介在することが明らかとなった.第3に,メロディあり/なし群とも反復呈示によって再生成績が増加したが,親近性の高いメロディのほうが低いメロディよりも成績が良かった.
  • 野内 類, 兵藤 宗吉
    2006 年 4 巻 1 号 p. 15-23
    発行日: 2006/08/31
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    気分一致記憶とは,気分が気分状態と一致した情報の記憶を促進することである.この気分一致記憶の生起には自己に関係づける処理が重要であると考えられている.本研究では,自伝想起課題と母親に関係づける課題である他者エピソード想起課題を用いて気分一致記憶の生起要因を検討した.大学生66名をランダムに実験条件に割り振った(ポジティブ,ネガティブ,ニュートラル).ポジティブとネガティブ気分群は,気分誘導のために音楽を聴取した.各群の被験者には4秒間隔で刺激が呈示された.刺激は快語30語と不快語30語の形容詞を使用した.参加者は刺激語から自伝的記憶が想起できるかどうか,もしくは刺激語から母親のエピソードを想起することができるかどうかを判断した.実験の結果,自伝想起課題でも他者エピソード想起課題でも,再生率においてポジティブ気分でもネガティブ気分でも気分一致記憶が見られた.このことから自己に関係付ける処理のみが気分一致記憶の生起に重要ではないことがわかった.
資料
  • 下木戸 隆司
    2006 年 4 巻 1 号 p. 25-32
    発行日: 2006/08/31
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    意味飽和は,同じ語を長時間凝視し続けていたり,何度も繰り返したりしていると,次第にその意味が減じられる現象として知られている.本研究では,単一語のプライミングによる語彙判断課題を用いて意味飽和効果の検討を行った.実験では視覚的な文字列の質に関する二つの条件が設定され,ターゲットは文字列の上に記号列が重ねられ,視覚的に劣化された状態で提示されたか,あるいは原形状態で提示されたかのいずれかであった.また,これらの要因は個人内要因として,両条件が混在した形で提示された.24名の大学生が実験に参加し,ターゲットが実在の単語であるか否かの判断を行った.その結果,ターゲットの視覚的な刺激の質にかかわらず意味飽和効果が認められ,下木戸(2004)と同様に,語彙判断課題であっても意味情報の関与を高めることで意味飽和効果が確認できることが示された.飽和の生起位置についても論じられ,プライムを長時間提示することで意味システムへのアクセスが抑制され,それが語彙システムにも波及することで意味飽和効果が生じている可能性が提起された.
  • 白石 紘章, 仲 真紀子, 海老原 直邦
    2006 年 4 巻 1 号 p. 33-42
    発行日: 2006/08/31
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    本研究は映画で提示された情報の再生,および情報源再認について,2種類の認知面接の効果を検討したものである.特に,繰り返し誘導情報を与えた場合の情報源再認について,面接の効果を評価した.72名の大学生は映画を見た後,誘導情報を含む事後質問紙に回答した.誘導情報の反復回数は,0回,1回,3回と操作された.24時間後,参加者は,認知面接,“文脈の心的再現”と“悉皆報告”教示で構成された修正版認知面接,または構造面接のいずれかを受けた.面接後,参加者は誘導情報についての情報源再認課題を行った.その結果,修正版認知面接は,認知面接よりも所要時間が短いにもかかわらず,構造面接よりも多くの,認知面接に匹敵する情報量を引き出した.しかし一方で,修正版認知面接,構造面接よりも認知面接で,情報源判断が優れていた.結果について理論的,実務的な観点から考察を行った.
  • 分部 利紘, 高野 陽太郎
    2006 年 4 巻 1 号 p. 43-45
    発行日: 2006/08/31
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    情報獲得モデルは,Wason選択課題の回答者は提示される規則に対してより尺度化情報量の多いカードを選択しているとし,その典型的な回答パターンを説明しようとした.このモデルでは人間が尺度化情報量の差を検出できることが仮定されるため,本研究では,新たに考案した“順位づけ課題”を実施することにより,人間はどれほどの感度で尺度化情報量の差を検出できるのかを測定した.この結果,本研究で測定された人間の感度によって,情報獲得モデルのパラメータの取りうる値の範囲は制限されることが明らかになった.
feedback
Top