抄録
本研究では,Aプライムが,主観的なイメージ鮮明度査定能力の指標として妥当か否かを検討した.視覚イメージ鮮明度質問紙(VVIQ)の,16項目のうち半数の項目に対しては閉眼・描画動作条件で,また,残りの半数の項目に対しては,開眼・眼球運動条件でイメージ形成が行われた.前者の条件では鮮明度が増加し,後者の条件では鮮明度が減少した.前者における評定値1(実際の知覚と同じくらい鮮明)もしくは2(実際ほどではないが,かなり鮮明)の選択をHit,後者における同様な選択をFalse Alarmとみなして, Aプライムが計算された.Aプライムは,VVIQの合計評定値よりも記憶成績をよく予測した.この結果は,鮮明度評定値の合計という慣習的な指標よりも,新しい指標Aプライムのほうが,イメージ能力をより鋭敏に測定できることを示唆している.さらに,Aプライムは,視空間ワーキングメモリでイメージの生成に携わっている内的書記の機能を測ると想定される,心的回転テストの得点と相関がなかった.この結果は,イメージの査定と生成が相互に独立であることを示唆している.