認知心理学研究
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原著
心因性の身体反応に関する子どもの理解と先行経験の役割
外山 紀子
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2007 年 5 巻 1 号 p. 11-21

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抄録

小学校1・2年生38名とその母親を対象として,心的状態に由来する身体反応に関する子どもの理解と,心因性の身体的不調を過去に経験したことの関連性を検討した.小学校1・2年生は,「緊張してお腹が痛くなった」のように心的状態が身体反応を生じさせる可能性があることを,十分には気づいていなかった.心因性の身体反応に関する理解は,心因性の身体反応を経験したことがあるかどうかに関する子どもの自己報告とは関連したものの,母親の報告とは関連しなかった.また,心因性の身体反応を経験したことがあると自己報告した子どもは,心因性の身体反応がなぜ生じるかについて,生気論的・機械論的因果性に依拠した説明を与えることが多かった.母親は,子どもが経験した身体的不調の原因を心的状態にあると考えていても,子どもは身体的要因から生じたとみなしている場合が多かった.以上の結果は,小学校1・2年生が,身体的不調の原因として心的要因を仮定するだけの認知的枠組みを有していないことを示唆していた.

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© 2007 日本認知心理学会
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