認知心理学研究
Online ISSN : 2185-0321
Print ISSN : 1348-7264
ISSN-L : 1348-7264
原著
異質性や感情の喚起によって生起する順向健忘:提示時間の効果について
野畑 友恵箱田 裕司
著者情報
ジャーナル フリー

2008 年 5 巻 2 号 p. 131-140

詳細
抄録
感情や異質さを喚起すると,その前後に提示された刺激の記憶が低下することが報告されている.本研究では,異質性や感情の喚起によって生起する逆向健忘や順向健忘について提示時間の効果を検討した.実験では15項目の刺激が逐次提示された.15項目の刺激の8番目に異質性や快・不快感情を喚起する写真刺激を挿入し,その他の項目は無意味つづりで構成した.大学生および大学院生の実験参加者は,刺激提示直後に自由再生による記憶課題を行った.3つの実験では刺激の提示時間が異なっていた.実験1では各刺激の提示時間が2秒,実験2では4秒であった.実験3では,8番目の刺激のみ1秒または6秒で提示し,それ以外の刺激は4秒で提示した.実験の結果,実験1では,感情の喚起によっても異質性の喚起によっても順向健忘がみられたが,実験2では感情の喚起によってのみ順向健忘がみられた.実験3では,不快感情が喚起された場合は8番目の刺激の提示時間が1秒の条件でも6秒条件でも順向健忘がみられたが,快感情が喚起された場合は1秒条件のみで順向健忘がみられた.逆向健忘は3つの実験すべてでみられなかった.これらの結果に基づいて,異質性や感情の喚起に起因する注意の働きの違いと健忘効果の関係について議論した.
著者関連情報
© 2008 日本認知心理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top