2008 年 6 巻 1 号 p. 57-63
本研究は,仮説検証過程における検証事例の選択が,検証過程を通じて変化するかどうかを検討するために行われた.75名の実験参加者は,2-4-6問題,および新エリューシス課題とよばれる規則発見課題のいずれかを解いた.参加者は,初期事例を与えられた後で,その事例を含む規則を発見するよう求められた.参加者は,毎試行において,その時点で考えられる仮説を挙げ,検証事例を選ぶよう求められた.また,検証事例が規則に合致するか否かがフィードバックされ,参加者は規則を発見したと確信が持てたときに,それを報告するよう求められた.その結果,仮説検証の終盤において,複数の仮説に対する相互排他的な検証を行う診断テストの選択が減少する一方で,仮説に沿った正事例検証,および仮説に沿わない負事例検証の選択は増加することが示された.負事例検証の選択の増加は,特に正解到達者において顕著であった.この結果から,検証の選択は,仮説検証過程を通じて固定したものではなく,少なくとも序盤と終盤では,異なった方略に基づいて選択が行われていることが示唆される.