認知心理学研究
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原著
大きさの異なるNavon刺激の視認知に気分が及ぼす影響:指標としての閾値の有用性
村上 嵩至
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2010 年 7 巻 2 号 p. 79-88

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抄録
視角の異なるNavon刺激を用いて,観察者の注意の焦点が,否定的気分によって,これらの刺激に含まれる小さな局所的特徴に合わせられ,肯定的気分によって,大きな大域的特徴に合わせられるという仮説を検証した.気分操作には,音楽あるいは絵本を用い,72名の実験参加者には,気分を操作する前と操作した後とで,各刺激に対して局所と大域のどちらの特徴がはっきりと印象深く見えたかを尋ねた.刺激が大きいほど局所への反応は増すことから,局所への反応数をもとに,大域への反応が局所への反応に取って代わる,すなわち閾値となる刺激の大きさを決定した.結果として,否定的気分時にはその閾値の低下がみられたが,肯定的気分時には閾値に変化はみられなかった.これらの結果に基づき,肯定的気分の効果は,安定して生じるものでなく,大域的特徴が肯定的な感情価に関係するとき,あるいは大域的特徴がひときわ利用しやすいときに生じるものであり,これに対して否定的気分の効果は,そうした関係性に依存しないと考察した.
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© 2010 日本認知心理学会
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