抄録
本研究の目的は,裁判員制度に対する参加意向や要望に,認知・感情要因がどのように影響しているかを明らかにすることである.分析対象者は,20から70歳の成人321名である.その結果,裁判員への参加意向は低く,裁判員に対する不安感やストレスそして裁判員になることのリスクが大きいと認識していることが示された.定職がない人のほうが,定職がある人より,裁判員になることに対して不安感やストレスが大きく,裁判員制度に対して強い要望をもっていることが明らかとなった.また定職のある人は,裁判員制度に関する知識があるが,仕事や職場に迷惑がかかると思っている傾向が高いことが分かった.さらに,定職あり群と定職なし群における要因間の関連性に関しては,1) 不安感→ストレス→後悔予期という感情的プロセスと,2) 裁判員リスク認知→裁判員ベネフィット認知→裁判員コスト認知という認知的プロセスがあることが分かった.さらにこれらプロセスは情報接触量・知識量の影響を受けていた.よって参加意向を高めるためには,裁判員制度に関する知識が重要であることが分かった.