2009 年 62 巻 4 号 p. 227-231
目的: 直腸癌に対する腹腔鏡下手術(LAP)は,ガイドライン上,術前深達度T2までの直腸S状部癌に対しては外科的治療のひとつとして記載されているが,Ra·Rbの直腸癌に対するLAPの適応に関しては未だ一致した見解がない.当科では直腸癌に対して2001年よりLAPを積極的に導入している.今回その短期成績についてretrospectiveに解析し,LAPの適応を直腸癌に拡大することの妥当性を検討した.対象および方法: 2001年1月から2007年6月までに当科で手術を行った直腸癌54例(LAP 41例,開腹手術13例)を対象とし,前期と後期に分けてLAP群と開腹手術群の臨床病理学的因子,周術期因子,中短期予後について比較検討した.結果: 全期間を通じてLAP群では有意に出血量が少なく,後期では術後創感染も有意に少なかった.両群ともに局所再発症例は認めなかった.結論: 側方郭清を必要としない直腸癌に対してLAPの適応を拡大していくことは妥当であると考えられた.