日本大腸肛門病学会雑誌
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原著
坐骨直腸窩膿瘍の病態と切開排膿術
栗原 浩幸金井 忠男石川 徹金井 慎一郎張 文誠金井 亮太黒田 敏彦
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2011 年 64 巻 2 号 p. 49-56

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抄録

病態:坐骨直腸窩膿瘍の原発口は通常後方正中の肛門小窩である.感染原因物質は内括約筋を頭側に斜走して後方深部隙(III P)に到り原発巣膿瘍をつくる.膿瘍の圧が高まり外括約筋を深いところで貫くと高位(III Ha),浅いところで貫くと低位坐骨直腸窩膿瘍(III La)になる.手術:原則は原発巣と膿瘍最深部までドレナージすることである.肛門縁から約2cm離れた6時方向で切開を加える.鉗子を後方深部膿瘍(III Pa)に向かって進め,原発巣膿瘍をまずドレナージする.膿瘍がIII HaやIII Laに進展していると,鉗子の先端が抵抗なくその部位に進み,さらに排膿が得られる.この場合,III Paを通り膿瘍腔の最深部までドレーンを挿入する.成績:III HaやIII LaはIII Pa経由で全例が排膿できた.切開時III HaやIII Laが存在した初回切開症例において,根治手術時にIII HやIII Lに瘻管形成を認めなかった症例は15/24例(62.5%)であり,適切な切開により痔瘻を単純化させ得ることが示唆された.

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© 2011 日本大腸肛門病学会

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