2012 年 65 巻 10 号 p. 874-878
Thiersch法は1891年にCarl Thierschにより報告された直腸脱の会陰式手術である.この術式は肛門管を取り巻くように糸や紐状の材質を挿入し肛門管を輪状に縮小させる方法であり,日本では昭和40年前後によく行われていた.
Thierschは銀線を用いていたが感染や肛門管内,会陰皮膚への潰瘍形成,銀線のゆるみや断線が問題であり,その後使用する材質の工夫が行われてきた.近年はテフロン紐やナイロン糸,伸縮性ポリエステルテープなどがよく使用されている.それでも再発率は40%以上と高く,Gant-三輪法などの述式と組み合わせて行った方がよい結果が得られている.しかしながらThiersch法は肛門周囲皮下への局所麻酔でも行えることから現在でも高齢者や全身麻酔のハイリスク直腸脱患者へのよい適応と考えられている.