2016 年 69 巻 5 号 p. 247-253
症例は84歳,男性で8年前にStage I直腸癌で低位前方切除術,6年前に吻合部再発でMiles手術の既往がある.貧血精査のため施行した上部消化器内視鏡検査で胃角部の粘膜下隆起病変から腺癌が発見され,幽門側胃切除と1群リンパ節郭清が施行された.粘膜に癌はなく,粘膜下組織と筋層のみに癌を認めた.リンパ節転移はなく,癌組織は既往の直腸癌に酷似しており,免疫組織化学検査で(CDX2陽性/CK7陰性/CK20陽性/MUC5AC陰性/MUC6陰性)で転移性胃癌と診断した.術9ヵ月後現在再発を認めていない.大腸癌の胃転移はまれであるが,胃内多発や同時他臓器転移や病期進行症例が多く,予後不良である.しかし自験例の様な肉眼的治癒切除例は予後を期待できる報告もされている.再発率の高い病期や経過が非典型的な症例はまれな臓器への転移も憂慮され,術後サーベイランスを長期に行うことが肝要と考えられた.