2016 年 69 巻 5 号 p. 254-259
症例は63歳の男性.便通異常を主訴に前医を受診,下部消化管内視鏡検査にてS状結腸に40mm大の発赤調の粘膜下腫瘍を指摘され,精査加療目的に紹介となった.腫瘍表面に潰瘍や陥凹を認めず生検は未施行であった.精査の結果,GISTや平滑筋腫,神経鞘腫などを疑い,遠隔転移を認めなかったため,腹腔鏡下S状結腸切除,リンパ節D2郭清術を施行した.病理組織学的検査では核の柵状配列を伴った紡錘形細胞の増生を認め,免疫染色ではc-kit陰性,CD34陰性,S-100蛋白陽性,MIB-1index<1%であり,良性神経鞘腫と診断された.大腸神経鞘腫は大腸原発の粘膜下腫瘍の中でも稀な疾患であり,また術前診断は困難であり,粘膜下腫瘍として手術が施行されることが多く,根治性を損なわないよう手術を行うことが肝要である.