2017 年 70 巻 6 号 p. 424-427
直腸癌術後に生じた直腸膣瘻に対し,保存的加療により治癒した症例を経験したので報告する.
症例は70歳代女性.直腸癌に対し,直腸低位前方切除術,DST吻合を行った.術後12日目より膣からの便中流出があり,直腸膣瘻と診断された.術後,絶食とし,膣洗浄およびエストリオール膣錠・クロラムフェニコール膣剤の使用を開始した.処置後14日目に肉眼的にはほぼ瘻孔は消失し,28日目には組織の脆弱性も消失し,治癒した.以降5年間,経過観察において直腸膣瘻の再発はみられない.
本方法は非侵襲的であり,直腸術後に生じた直腸膣瘻の治療に対しては推奨すべき治療法の1つと考えられた.