2017 年 70 巻 6 号 p. 440-444
今回われわれは,内視鏡像からクラミジア直腸炎を疑ったが,最終的に非典型な潰瘍性大腸炎と診断された1例を経験したので報告する.症例は51歳女性.排便時出血を主訴に受診.下部消化管内視鏡検査では,下部直腸に急性炎症を伴った半球状隆起を認めた.生検所見ではリンパ濾胞過形成,びまん性炎症細胞浸潤,陰窩炎,陰窩膿瘍を認めた.クラミジア直腸炎を疑ったが,症状は自然軽快し経過観察となっていた.半年後,症状再燃を認め受診.内視鏡検査では初回時同様の所見に加え,その口側に膿性粘液を伴った粗糙粘膜,易出血性がみられた.再度クラミジア直腸炎を疑い,アジスロマイシン内服による治療を行ったが効果を認めなかった.クラミジアを含めた感染症検査が陰性であったこと,潰瘍性大腸炎にも矛盾しない所見を呈していたことから,リンパ濾胞過形成を伴った潰瘍性大腸炎と診断し,メサラジンによる治療を行ったところ速やかに改善した.