2025 年 78 巻 10 号 p. 408-414
高齢者に多い直腸脱に対する経肛門的(経会陰的)治療は低侵襲性において優れた治療とされている.当院では脱出腸管の外管粘膜と内管粘膜を分割して剥離するDelorme手術(変法)を行っている.2017年6月から2024年4月までの6年10ヵ月間に完全直腸脱と診断した40例に対してDelorme手術(変法)を施行した.男性2例,女性38例で,年齢の中央値は81歳(50-91歳)であった.平均脱出腸管長は4cm(2-7cm),総粘膜切除長は11.4cm(5-24cm)であり,再発は6例に認めた(再発率15%).手術死亡例は認めなかったが,1例(2.5%)で縫合不全,5例(12.5%)で縫合部狭窄を認めた.再発しなかった34例を対象に術前・術後の肛門内圧検査(最大静止圧,最大随意収縮圧)と便失禁スコア(FISI),便秘スコア(CSS)を評価したが,いずれも有意に改善していた.