日本大腸肛門病学会雑誌
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大腸早期癌の治療方針について
北條 慶一
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1975 年 28 巻 4 号 p. 373-376,400

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抄録

早期癌の外科治療で問題となるのは深達度smの場合であろう.深達度mの癌なら,リンパ節転移の経験もなく,また従来の治療経験からみても局所的切除で充分といえる.
癌がsmへ進展すると,5~10%の症例にリンパ節転移が認められ,この事実を如何に評価するかによって考え方が異ってくる.私どもは根治性第一ということからsmの癌は進行癌と同様に取扱うべきであるという考えである(R1程度の手術).smへの浸潤の量とか組織像の分化程度(浸潤部分は低分化傾向を示すものが多い)とかによって区別しても絶対的でなく,宿主個体にとってはRiskからみれば無意味である.
ただし,直腸下部や肛門管に発生したsmの癌には可及的括約筋残存に努力が払われるべきであるが,それでも根治性の面から人工肛門を回避できないときには,患者の強い希望に相応して括約筋残存のための可及的拡大局所切除(Mason. Kraskeなどの切除術)も,次善の対応策として,術後充分な観察という条件をつけて一応認められよう.原則はやはり重積法(welch)切断あるいはpull throughである.

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