1977 年 30 巻 2 号 p. 113-117,182
38歳の女性にたまたま直腸前壁に黄色調の平滑な微小隆起性病変が発見され,その内視鏡所見からカルチノイドが強く疑われた.しかし生検では繰り返し何らの所見を得ることができなかった.色素撒布法によってこの病変は粘膜下に増殖をとるものと判明し,手術の結果はカルチノイドであった.
直腸に発生するカルチノイドはカルチノイド症候群に代表される症状が発現しにくく,生化学的診断法も必ずしも有効でないことから,その診断のためには生検が重要であるが,粘膜下腫瘍の生検のための新しい機構の鉗子の開発が望まれる.