日本大腸肛門病学会雑誌
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鑑別診断
その周辺の諸疾患を含めて
升森 茂樹野垣 茂吉
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1980 年 33 巻 5 号 p. 448-455,516

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抄録

痔瘻の鑑別診断に当っては,痔瘻の発生原因である潰瘍性大腸炎などの合併疾患,その発生機序を知ることが重要である.また,その周辺の諸病変について,肛囲皮膚,肛門管,坐骨直腸窩,直腸壁内及び仙骨前領域の諸疾患に分け記載を行った.
臨床上,注目すべきは,仙骨前領域である.
第1に,post-anal sinusや膿瘍の存在であり,痔瘻と誤診され頻回の手術から肛門機能不全を来たす例もある.第2に,又先天性,炎症性,神経原性,骨性などの諸疾患が見られるが,ほとんどが先天性疾患であり,次いで神経原性のものが5乃至10%を占めている.全体的には,これら諸疾患の約1/3が悪性疾患である.第3に仙骨前領域の疾患は,入院患者40000人に1人,直腸鏡検査症例7000例中に1人の低い発生頻度である.
これら観点から,痔瘻との鑑別上極めて重要な領域なのである.
仙骨前疾患に対しては注意深い直腸指診が特に重要であってほとんどが直腸指診によって鑑別出来得るがそれに附随した末梢血,レ線及び内視鏡検査,試験生検,血管造影などに加え,最終的には,病理組織学的診断が確定診となる.

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