1986 年 39 巻 3 号 p. 263-268
注腸検査で,enema tube balloonの過伸展により直腸に生じたbarium granulomaを合併した潰瘍性大腸炎の1例を報告した,症例は60歳女性.約3年半前に発症した全大腸炎型潰瘍性大腸炎で,腹部単純X線写真で小骨盤腔内に3.5×2.5cmの陽性陰影があり,内視鏡検査では潰瘍性大腸炎の所見に加えて,肛門輪より4cm口側,4時方向に黄白色の斑状模様をみとめ,同部からの生検組織で淡黄緑色の結晶物質を貪食した多数のmacrophageがみられた.前医での注腸X線写真の検討から,enema tube balloonの過伸展が粘膜を損傷し発生した直腸barium granulomaと考えられた.わが国における直腸barium granulomaの報告は著者らが調べた限り8例と稀で,とくに潰瘍性大腸炎で起こった報告は本例のみである.なお,報告例8例のうち,診断確定のため,あるいはBorrmann IIまたはIII様の悪性像などと判定されたため4例に外科的処置が加えられている.