日本大腸肛門病学会雑誌
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大腸癌スクリーニングのための新しい免疫学的便潜血反応試薬
多田 正大尾川 美弥子清水 誠治渡辺 能行川本 一祚川井 啓市
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1987 年 40 巻 6 号 p. 747-754

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抄録

新たに開発されたラテックス凝集反応を用いた免疫学的便潜血検査用試薬(イムノカルト)を用いて,大腸癌スクリーニングのための有用性と問題点について基礎的ならびに臨床的立場から検討した.
基礎的検討として測定手技上の誤差に伴う成績のバラツキを検討した結果,(1)採取された糞便は4-5日間であれば感度の低下をきたすことはなく,特にスティックに採取することによって,安定性は一層確実になる,(2)糞便をスティックに採取する場合,採取量が多過ぎないように注意しておく必要がある,(3)反応の判定時間に幅があり,多数の検体を一度に処理する場合であっても有利である,(4)プロゾン現象についても十分避けることができる,と評価された.
大腸癌43例(進行癌37例,早期癌6例),大腸ポリープ32例および健常者162例に対する臨床成績では,(1)大腸癌に対して95.3%,大腸ポリープは313%に陽性反応が得られ,健常者の偽陽性率は6.2%であった,(2)大腸癌に対するイムノカルトの敏感度は95.3%,特異度は93.8%,陽性反応適中度は80,4%,陰性反応適中度は98.7%であり,高い精度があることが確認された,(3)ROC曲線を用いた検討に零ると,2回の検査であっても十分に信頼性が高い,ことが確認された.以上の基礎的ならびに臨床的検討からイムノカルトは大腸癌診断上の精度が高く,かつ反応操作も簡便であり,コストも比較的安価であることから,大腸癌のスクリーニングの目的に十分かなう検査法であると評価された.

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