1987 年 40 巻 6 号 p. 770-776
直腸粘膜からの高分子吸収を形態学的に調べる目的で,ラット直腸にhorseradish peroxidase(HRP)をグリコール酸ナトリウム(NaGC)およびオイレン酸(OA)を添加剤としてエマルジョンの形で注入した.注入後,1分から60分までの直腸組織を採取し,Karnovskyの方法にて,HRPの吸収部位を電子顕微鏡を用いて観察した.注入後,1分にて早くも,上皮細胞間隙にHRPの取り込みが認められ,5分,15分後でもほぼ同様の所見を呈したが,60分後では,上皮細胞間隙にHRPは観察されず,粘膜固有層に存在する貪食細胞内にHRPが存在するのみであった.添加剤を加えないものでは,微繊毛(microrilli;MV)に付着したHRPのみが認められ,吸収像は得られなかった.直腸粘膜では,上記添加剤が何らかの形で,直腸上皮細胞の閉鎖結合(tight junction;TJ)を一時的に離開させる作用があり,これによってHRPが吸収されたものと考えた.