直腸癌の根治手術に際しCUSA(cavitron ultrasonic surgical aspirator)を用いて,関連する自律神経系を温存し,術後の排尿,排便機能に対する効果を検討した。症例はRs1,Ra5,Rb12の計18例でR1~R3の手術を行った.その結果,郭清の程度とは関係なく尿意は術後1~5(中央値2)日に発現し,バルーンカテールも2~10(同6)日で抜去することができた.対照群とした自律神経を温存しなかった低位前方切除施行18例および腹会陰式直腸切断術16例のそれぞれにおける尿意発現日は2~32(同14)日+および1~41(同25)日+であり,バルーンカテーテル抜去日は4~61(同12)日および6~67(同22)日であり,後者ではこの他に抜去不能例が3例認められている.排ガス,排便については手術法にかかわらず差は認められなかった.自律神経温存手術は将来の直腸癌手術の方向として極めて重要であり,用いる機器および手技の一層の改良が望まれる.