1995 年 48 巻 7 号 p. 611-616
結腸膀胱瘻の成因は炎症性, 腫瘍性, 先天性, 外傷性, 医原性などによる二次性変化によるものがほとんどである. 本邦においても近年, 食生活の欧米化に伴い腸の炎症性疾患, とくにS状結腸憩室炎に起因するものが増加の傾向にある. われわれは, 過去5年間に経験したS状結腸膀胱瘻6例について若干の文献的考察を加え報告する. 症例は54歳から89歳までで, 性別は男性4例, 女性2例である. 原疾患はS状結腸癌3例, S状結腸憩室炎2例, 放射線性腸炎1例であり, 初発症状は糞尿, 気尿, 下腹部痛である. 術前検査では膀胱造影と膀胱鏡検査が瘻孔の証明に有用であった. 全例に手術を施行しS状結腸切除術が4例, 人工肛門造設術が2例であり, 膀胱に対しては膀胱部分切除術が2例, 膀胱全摘術尿路変更術が2例, 膀胱切除が不可能な2例に対しては尿管皮膚瘻術を施行した. 術後経過では, S状結腸癌の1例のみが原病死した.