日本大腸肛門病学会雑誌
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家族性大腸腺腫症(FAP)の大腸全摘除術後に多発したデスモイドの1例
本田 一幸大木 進司安斎 圭一菊地 洋一安藤 善郎吉田 典行土屋 敦雄阿部 力哉
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1998 年 51 巻 2 号 p. 92-97

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抄録

症例は20歳の女性.1994年4月,家族性大腸腺腫症の診断で大腸全摘術を施行した.1995年10月より右下腹部の硬い腫瘍に気付き,1996年に入って頻尿,残尿感も出現した.その後も腫瘍は増大するとともに疼痛も訴えるようになったため,4月手術を目的に入院した.入院時の所見では右下腹部の腫瘍は9.3×8.1cm,右上腹部は4.5×3.9cmを計測した.腹部CTでは腹直筋内に境界明瞭な充実性腫瘍が描出され,左腎は腎盂が拡大し水腎症に陥っていた.DIPおよびRPでは左尿管の骨盤内での狭窄がみられた.腹壁デスモイドおよび腹腔内デスモイドによる左尿管狭窄と診断して6月4日に手術を施行した.腹壁のデスモイドを切除後開腹した.腹腔内では左尿管の狭窄部の他,4個のデスモイドを認めすべて切除した.デスモイドは妊娠可能な女性に好発し,手術などの外傷が契機となって発症するといわれているが,この様に多発した症例の報告はまれであり,文献的考察を加え報告した.

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