抄録
大腸ポリープのうち腺管内腔側に上皮鋸歯状増殖を示す病変〔Colorectal Polyp with Epithelial Serrated Proliferation(CP-ESP)〕を組織学的に核形態計測を用いて分類することで以下の知見を得た.対象はCP-ESP60病変,ポリープ最大割面で3~6陰窩を選び全上皮細胞核の長短径を実測し,π/4×長径×短径(楕円面積近似式)および長径/短径を求め核サイズ,紡錘化の指標とした.陰窩3等分による底部〔Bottom(B)〕,中間部〔Middle(M)〕,上方部〔Upper(U)〕のうちB-UおよびM-Uの2領域間で,核サイズ平均値の差を検定した.CP-ESPはB,Mに比しUで有意に核サイズが減少するZone形成(+)群〔Z(+)〕と,いずれも有意差のないZone形成(-)群〔Z(-)〕に分類された.Z(+)のうち腺管分枝のないものは従来のHyperplastic Polyp(HP)に相当し,腺管分枝を示すものの中にはB~Mで大きな核をもつ異常増殖性病変が含まれた.Z(-)のうち腺管分枝のないものにはLongacreらのSerrated Adenoma(SA)に,腺管分枝を示すものはTubulovillous Adenoma(TVA)に相当した.
従来のHP,LongacreらのSA,鋸歯状腺管を有するTVAは核サイズ,核形,Zone形成の有無腺管分枝の有無により,それぞれ鑑別し得るものと考えられた.