2001 年 54 巻 10 号 p. 955-959
急性出血性直腸潰瘍と宿便性潰瘍はいずれも基礎疾患を有する高齢者に発生し大量下血をきたす疾患であり,高齢化が進む中でますます重要性が増すと考えられる.急性出血性直腸潰瘍はストレスや臥床などによる血流低下を基礎に発生すると考えられている.下部直腸の歯状線近傍に発生する不整形潰瘍で輪状に分布するのが特徴である.宿便性潰瘍は高度の便秘による糞便塊が腸管を機械的に圧迫することにより生じるが,血流低下が背景にあると考えられている.直腸に好発するが結腸にもみられ穿孔をきたすこともある.不整形潰瘍であるが歯状線近傍にはみられない.先行する高度の便秘の有無や病変の部位,形状から両者の鑑別はある程度可能である.いずれの疾患も大量出血をきたすため,速やかに診断して内視鏡止血術などの積極的治療を行う必要がある.止血できれば治癒傾向は良好であることが多い.