2001 年 54 巻 4 号 p. 253-257
出血性放射線性腸炎は,難治性で有効な治療法がなく,様々な薬物療法やヒータープローブ法などの内視鏡治療が試みられているが,まだ確立されたものはない.我々は血便と著明な貧血を主訴とし,大腸内視鏡検査にて直腸からS状結腸に広範に毛細血管の拡張と著明な出血を認めた難治性出血性放射線性腸炎4例に対し内視鏡下にホルマリン散布を行ない良好な治療効果を得た.年齢は66歳から87歳平均76歳.性差はなく,原疾患としては前立腺癌2例,膀胱癌1例,膣癌1例で,放射線照射線量は60から70Gy,照射から治療までの期間は8カ月から5年であった.散布したホルマリン濃度は2.5%から5%で量は5~65ml,平均17.5mlで全例に良好な止血効果を得た.1例は止血までに3回の散布を要したが,その他の3例は1回のみの散布であった.副作用は散布時の著明な疼痛を2例(50%)に認めたが重篤な合併症は見られなかった.