2002 年 55 巻 5 号 p. 229-233
症例は65歳女性.既往歴として,39歳時に子宮癌の手術と放射線治療が行われている.元来便秘症であった.数日間の便秘の後,突然の下腹部痛と1日数回の下血が出現し,大腸内視鏡検査にて肛門より約30cmのS状結腸に下掘れ状の類円形潰瘍を認めた.絶食,中心静脈栄養管理を開始したが,症状の改善は見られなかった.その後の生検組織検査にて間葉系に異型性細胞"owl-eye-appearance"を認め,病歴と内視鏡像,及び病理学的所見から放射線腸炎と診断した.放射線腸炎は直腸前壁に好発し,S状結腸には8.8%と少ない.本例は非定型的であったが,生検組織検査が診断に有用であった.